流れに掉さす とは?
「流れに掉さす」の意味
「流れに掉さす」とはどういう意味かご存じでしょうか?
読み:ながれにさおさす
竿かぁ、なんで竿を刺すんだろうね?しかも、流れって、川とか?
なんででしょうねぇ。
刺したら洗濯物干せないのにねぇ。
ん?物干し竿は刺さんやろ?
最近の使われ方
「会議の途中で流れに掉さしてしまった。」
「流れに掉さすような発言は控えてください。」
というように、「流れに逆らって勢いを失わせる」「邪魔をする」という意味の言葉として理解して使っている人は多いかと思います。
ですがこれは本来の使い方ではないのです。
本来の意味
本来「流れに掉さす」とは
流れに棹をさして水の勢いに乗るように、物事が思いどおりに進行する。
という意味で使われている言葉です。
ですから、「流れに逆らって勢いを失わせる」「邪魔をする」という意味の言葉として使うのは誤りだといえます。
流れに棹をさして水の勢いに乗る…?どういうこと?
きっとカッコつけて言いたかったんよ。
そんなわけないでしょ!
「流れに掉さす」の由来
「流れに棹さす」の「棹」とは
①さお。舟をこぐのに用いる棒。かい。
②三味線の糸を張る部分。
③簞笥(タンス)・長持などを数える語。
という意味で使われている言葉です。
今回は①の意味で使われており、船を進める船頭が持つ長い棒のことを表しています。
最近では観光地くらいでしか見かけませんが、昔のまだ日常生活の中で舟がよく使われていた頃には、船頭が長い棹を流れの中にさすようにして水底を押し、船を上手く水流に乗せて進めていく光景がよく見られました。
その様子を「流れに乗って、物事が思いどおりに進む」という意味で、比喩的に用いた慣用句が「流れに棹さす」というわけです。
ちなみに、「竿」は、枝・葉を取り払った竹や木の細長い棒のことを指します。
物干し竿・釣り竿・旗竿などで、合成樹脂・金属製もあるそうです。
船で持ってる棒なら知ってる!あれのことかぁ~。
あれで水底を押してスピードを上げてるとか知らんかったんな。
乗ったこともないですしね。
イタリアのゴンドラにいつか乗ってみたいんな。
誤用の定着率
平成14、18、24年度に「国語に関する世論調査」で、「その発言は流れに棹さすものだ。」という例文を挙げて「流れに掉さす」の意味を尋ねたところ、
本来の意味の「傾向に乗って、ある事柄の勢いを増す行為をすること」で使う人は平成14年度が12.4パーセント、平成18年度が17.5パーセント、平成24年度が23.4パーセント、
本来の意味ではない「傾向に逆らって、ある事柄の勢いを失わせる行為をすること」で使う人は平成14年度が63.6パーセント、平成18年度が62.2パーセント、平成24年度が59.4パーセントという結果が出ています。
低い~!
けどじわじわと上がってきてるんな。じわじわだけど。
なぜ誤用されることが多いのか
なぜ誤用されることが多いのか、それは「水をさす」という言葉と混同しているからかもしれません。
「水をさす」とは
①水を加えて薄くする。
②仲のいい者どうしや、うまく進行している事などに、わきから邪魔をする。
という意味で使われている言葉です。
料理などのときには「薄くする」という意味で使い、それ以外では「邪魔をする」という意味で使われています。
「流れに掉さす」と「水をさす」、この二つの言葉にはどちらも「水」に関係することと「さす」という言葉が入っています。
「水をさす」は今でもよく使われていますし、「邪魔をする」という意味も浸透しています。
ですが「流れに掉さす」という言葉はあまり使いませんし、棹を持った船頭もあまり見かけないので、棹をどう使って船を動かしているかも知らない人が多く、馴染みが薄いです。
そのことから、「水をさす」と混同して、「水の流れを棹で邪魔している」というようなイメージで考えている人が増えているのかもしれません。
確かに!流れをせき止めているようなイメージだったんよ。
「水をさす」と混同していましたね。
うむ、やられたわい。
そっか~、「水をさす」って邪魔するって意味だったんだね~。
まとめ
「流れに掉さす」の本来の意味は「流れに棹をさして水の勢いに乗るように、物事が思いどおりに進行する。」である。
しかし最近は「流れに逆らって勢いを失わせる」「邪魔をする」という意味で使われていることが多いが、誤りである。
邪魔をするという意味の「水をさす」という言葉と混同しているからかもしれない。
「流れに掉さす」といえば「智に働けば角が立つ 情に棹させば流される 意地を通せば窮屈だ」という有名な一節がありますね。
夏目漱石の「草枕」の有名な書き出しなんな。
初めて聞いたよ、そんなに有名なの?
有名ですよ!毎日暇しているんですから一度読んでみてください。
えー…難しそうだから遠慮しとくよ。