煮詰まるとは?
「煮詰まる」の意味
『煮詰まる』とはどういう意味かご存知でしょうか?
読み:『につまる』
一晩煮詰まったカレーって美味しいよね!
一晩も煮詰まったら丸焦げですよ。
うちは寝かせずにすぐに食べたい派!
ところでどうして急にカレーの話題に?
最近の使われ方
最近は「行き詰まった」という意味合いで使われることが多いです。
「社長に絶対売れる商品のアイディアを今日中に考えるように言われてずっと考えてるけど煮詰まった…無理…。」
「12時間ぶっ続けで勉強していたら煮詰まってしまったよ。」
などと使われていますし、よく聞くと思いますが、この使い方は本来の使い方とは違っています。
社長ムリ言い過ぎだね、絶対に売れる商品なんてムリだよー。
例文の内容は置いといて、「煮詰まる」の話ですよ。
本来の意味
本来『煮詰まる』とは
煮えて水分が無くなった状態。転じて、議論や考えが出尽くして結論を出す段階になること。
という意味で使われていました。
なぜ誤用されることが多いのか
物事がうまく運ばない状態の「行き詰まる」という言葉の影響を受けていることが考えられます。
煮込み料理中、まだ大丈夫と思っていたのに、水分が蒸発しすぎたり、味が濃くなったり、焦げ付いたりしたことがある人も多いでしょう。
その結果、「煮詰まる」という言葉が「煮えた」から「煮えすぎた」というマイナスイメージとなり、行き詰まるという意味で使われだしたのでしょう。
煮込み料理って目話すとすぐに焦げるよね~。アニメ見てたら焦げてたよ。
そうなん?料理しないから分からん。
辞書の改定
誤用の広まりによって広辞苑、日本国語大辞典では改定が行われました。
「広辞苑 第6版」(平成20年 岩波書店)
に-つま・る【煮詰る】
[1]煮えて水分がなくなる。
[2]議論や考えなどが出つくして結論を出す段階になる。「ようやく交渉が-・ってきた」
[3]転じて、議論や考えなどがこれ以上発展せず、行きづまる。「頭が-・ってアイデアが浮かばない」
[1]と[2]の記述はほぼ同じ内容ですが、[3]に「議論や考えなどがこれ以上発展せず、行きづまる。」という意味が加わっています。
「日本国語大辞典 第2版」(平成15年 小学館)
では、日本国語大辞典も見てみましょう。
に-つま・る【煮詰】
[1]煮えすぎて水分が蒸発してしまう。
[2]議論や考えなどが出つくして、問題点が明瞭な段階になる。
[3]問題や状態などが行きづまってどうにもならなくなる。
[1]では、「煮えて水分がなくなる」という言い方ではなく、「煮えすぎて」「蒸発してしまう」というマイナスイメージが加わってしまいました。
辞書の内容も変わっちゃたの!?
誤用の定着率
文化庁が発表した平成19年度「国語に関する世論調査」で、「七日間に及ぶ議論で、計画が煮詰まった。」という例文を挙げて「煮詰まる」の意味を尋ねたところ、
本来の意味とされる「(議論や意見が十分に出尽くして)結論の出る状態になること」で使う人は56.7パーセント、
本来の意味ではない「結論が出せない状態になること」で使う人は37.3パーセントという結果が出ています。
全体では本来の意味である「(議論や意見が十分に出尽くして)結論の出る状態になること」を選択した人の割合が高くなっています。
しかし、年代別の結果を見ると、40代を境にして「結論の出る状態になること」と「結論が出せない状態になること」を選んでいる人の割合が逆転しています。
調査から10年以上経っていますので、今では50代を境になっているかもしれません。
つまり、若い世代では「結論が出せない状態」として、年配の世代では「結論の出る状態」というように正反対の意味でこの言葉を使っている可能性があります。
年代によって違うの?
じゃあ社長に絶対に売れる商品アイディアのことを聞かれた若い社員が「煮詰まりました」って正直に答えたのに、社長に「煮詰まったのに何で出来てないんだ!」って怒られることもあるってこと?
大いにあり得ますね。
ザ・理不尽!
まとめ
元々は「水分が蒸発したり、結論を出す段階になる」プラスのイメージな言葉だったのに、
近年は「行き詰まってどうにもならなくなる」というマイナスイメージで使われはじめ、辞書も変わってしまった。
若者は「行き詰まる」、年配の人は「結論が出る」の意味合いで使う人が多いので、問題が起こることがあるかも。
つまり紛らわしい言葉ってことだね。
煮詰まったと言われたら、その人がどちらの意味で使っているのか確認が必要ですね。
うむ、つまり面倒。